窓ガラス挑戦倶楽部【5枚目】残念!?光造形クリアアクリル
大枚はたいた甲斐があって前評判が上々だったShapewaysの光造形によるクリアアクリルを使った窓ガラスについて、検証を行いました。Zゲージで車両を自作するうえで、窓ガラスは塗装と同じく気になる部分ですので、じっくり見ていきます。
磨いてみるものと磨かないもの
一番期待のキハ65の客室用窓ガラスは失敗に終わりましたが、キロ28用は使えそうな状態でしたので、右用左用の2枚のうち1枚をそのまま、1枚を磨いて検証しました。造形物を磨く件については、Shapewaysの光造形で使用されているAccura® 60のメーカーから使用内容を調べ、厳密な光学用途でなければ、400番のペーパーがけ後クリアを吹いて仕上げる方法もあるとありましたので、試してみることにしました。
磨く前の状態
早速磨いても良いのですが、造形物を今一度眺めてみます。まずは、キロ28用から。
造形方向は水平に置いていましたが、光造形は硬化を均一にするため斜めに造形されていきます。そのため、積層痕が等間隔で入っています。
この積層痕は、写真のとおり表裏関係なく入っています。手触りでは分かりにくいほどの段差ですが、実際にクリアをこのまま吹き付けてもいけるかも知れませんので、片方だけ磨くことにします。
次に、キハ65用に作成したパノラミック窓です。
前から 角度を変えて
こちらはモノが小さいだけに、積層痕はあまり目立たない感じです。これは磨きをかけず、そのままクリアを吹き付けてみます。
磨いてみた
てことで磨きですが、400番のペーパーでは荒すぎると思いましたので、600番で磨くことにします。経験上荒いペーパーで磨くと1度の塗装では磨きの傷を埋めきれず、何度か研ぎと塗装が発生するからです。
まあ、うまくいかなきゃ400番で磨きゃいっかな。← テキトーw
磨きは手持ちの神ヤス600番スポンジブラシで。早速磨きます。
ゴシゴシ 真っ白け
モノが透明なので、磨くと当然まっちろけ。手触り、目視で面が平滑になるように磨いていきます。
と、ここで気になることが一つ。磨いてると、なんだか感触がおかしくて、平面が出てないような感じがしてきました。
要は、軟らかいのです。試しに手で曲げてみると、ぐにゃっといきます。
ひょっとして、体温程度で軟らかくなる?
しばらく放置すればある程度の硬さになるのかと思っていたところ、もともと軟らかく、ペーパーがけなど力が入ると曲がるようで、体温程度で軟らかくなるのではなさそうです。これは追加のUV硬化が必要なのか?それともこんなもの?と色々想像しましたが、軟らかいことには変わりがなく、少し黒雲が…。
硬化については、ネットで「透明レジンは硬化しにくく、UV照射時間の調整が難しい」と動画だかサイトだかで見たことがあります。どうも「光で固まるのに光を通す」てとこが問題のようで、これは光造形の機材が手元にないと、調整は難しいんでしょうね。
まあ、乗りかかった船ですので、このまま作業を続け、いよいよクリアを吹き付けます。
UVカットクリアを吹き付け
クリア塗料は、以前の挑戦(窓ガラス挑戦倶楽部【4枚目】クリア吹いてみた)でも使用した、Mr.カラーのMr.スーパークリアーUVカット透明です。
こんな写真は大きくなくていいかな、て感じですが、実はこのシリーズ、いくつか種類があります。UVカットではないもの、光沢、半光沢、つや消しがあり、どれも缶が微妙な灰色なので、買う時に少し混乱。
赤文字で「UVCut」と書かれていると安心して手に持っていたら艶消しだったり、「光沢」に惹かれて手にすると「UVCut」ではなかったりと、私のような粗忽者は他に買うものがあると間違えてしまいます。皆様はそのようなことはないと思いますが、品揃えに関わらず慎重に買いましょう。
てことで、吹き付けました。まずは、キロ28用から。
吹き付け直後 下が磨き分
見るに、透明感はまずまずです。磨いた跡が分かる気がするので、もう一度吹き付けますか。
使えそうですね…いや、なんか曲がってませんか?お客さん。
垂直方向 縦方向
塗装用のクリップで挟んで塗装したので、重みで下がったのかもしれませんが、これは悲しい。縦方向は手で曲げればいいのですが、垂直方向も手で曲げてなんとかなるんかな…。
さらに細かく見てみると、
なんと、塗装用クリップで挟んでた個所に、ワニ口のようになっているクリップの歯の模様がついちゃってます。やはり、硬化が足らんのだわこりゃ。
次回は紙に広げて片面ずつ塗っていくかな。UVライトも手持ちがありますので、まずはUVライトで二次硬化をかける方が確実か。
いずれにしても、このレジンの特性を分かっておく必要があることが分かりました。もう少しメーカーの英語サイトを詳しく見てみましょうかね。
次に、運転席用の窓ガラス見ます。これは、磨きをかけていません。
透明感バッチリ よく見ると積層痕
こちらは大きさ故に積層痕はあまり目立ちません。できれば磨くか、てとこでしょうか。透明感はとてもいいです。
ただし、光造形ではないアクリル造形と、あまり仕上がりが変わらない気がします。よく見ると、サポート材跡の処理で直線がイマイチなところがあったり、角が甘い部分があったりで、完璧に「これを」という決め手がないかな、と思いました。
ボディに嵌めてみた
取り扱いに注意すれば、なんとか使えそうなことは分かってきました(絶対にこれを使うとは言っていない)ので、ボディにはめ込んでみます。
あると嬉しいキロ28用からいきます。磨きなしの窓と、以前作成していたアクリル造形のボディで検証しました。
こっちを合わせると… 窓さん長すぎw
ここまできて、これでやんす。垂直方向のずれを考慮しても、誤差はあるのでしょうが、残念です。
窓抜きの部分にはぴったり嵌りますので、一つ一つ切り離せば使えないことはないか。ま、私はそこまでやらないかなぁ…。
次に前面ですが、キハ65は光造形で窓のHゴムが飛んでいたため、以前作成した後期型の窓と合わせてみました。ここでのくどい説明は、ボディがちょっと残念なので、窓の嵌り具合だけ見て欲しいという私の心の声でございます。
収まりOK 裏からの嵌り具合
はめ込み具合、透明感、ともに使えます。入り組んだ部分も問題ありません。
今回のまとめ
光造形の透明レジンは、透明性は申し分ないものですが、寸法的にはあまり期待できないことが分かりました。
設計上でサポート材の場所などをある程度考慮したため、サポート材跡は光造形の他のレジンよりは気になりませんでした。磨き作業も面の大きさや形の入り組み状況で、合う方法をとれば、ものとしては使えます。
ただし、斜めに造形していく関係上、長手方向の誤差を設計上で考慮するか、ある程度の分割を考慮するか、かなり工夫が必要です。反面、小さなものであればいけそうですが、キハ65の客室用窓のように、寸法が細かいと造形は飛んでしまいます。
小さなものだと通常のアクリル造形でいいようですし、価格の高さを考えると、今のところあえて使用しなくても良いかなと思います。反面、大きなもので透明な素材感を活かすものであれば良い造形ができそうですので、設計上厚みが確保でき、多少の誤差が生じても構わないものであれば、活用の価値が大きいと感じました。
大きな窓を持つ車両であれば、その車両の個性として窓ガラスは大切なものとなります。パノラマカー等、前頭部のみをこの造形によるなどの設計はあっていいと思います。
要は、使う場所って結論になりますか。
今回の授業料は高くなりましたが、今後のモデル設計に役立てていきたいと思います。
【雑感】この透明感は捨てがたく、ヨーロッパのガラス電車や瑞風などボディ一体で造形するという手もあるかも。マスキングに「大きな」課題はありますが。